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  お坊さんの役割
 
 仏式のお葬式では、お坊さんを「導師」とお呼びします。導師は、仏の教えを説いて、人々を仏道に入らせる僧のことをいいますが、葬儀の時は、導師が棺の前に立ち、死者が悟りを得るように法語を唱えます。これを「引導を渡す」といいます。「もう、あなたは死んだんだよ。この世に未練を残しちゃダメだよ」とあきらめるように最終的な宣告をするわけです。そのために何度も何度もお経を読みます。
 
 だから、お坊さんの役割は、故人をしっかりとあの世に送り出すことです。「しっかり」という意味は、故人に対してばかりではなくて、遺族の人に対しても揺れ動く感情をちゃんと整理してあげるためにも「しっかり」と送り出さなければなりません。
 その意味では、臨終の時、魂が肉体から離脱し始め、まだ故人が死を自覚していないときの「枕経」が一番大切なんですが、最近は病院で死亡される方が多いので臨終経がなくなりました。
 通夜式では、極楽浄土に住んでいる阿弥陀如来さんを初め、数々の如来様、菩薩様、天使様をお呼びし、故人が無事お釈迦さまの弟子として極楽に行けるようにお願いします。諸仏如来、菩薩天使が故人をお迎えにきます。そのために阿弥陀経や法華経を読みます。
 葬儀(告別式)では、仏弟子になるために戒(戒律)を授け、剃髪(坊主頭)し、戒名・法名を授けます。これからは、あなたは出家して諸仏如来のもとで修行に励むのですよ。と引導を渡します。この世の未練(俗欲)を断ち切り、あの世に送り出すわけです。これが「葬式仏教」の真髄です。
 これだけの儀式をおこなうには俗人では無理なので、お坊さんに頼むわけです。しかし、これを中途半端ににやられますと「うかばれない」となります。
 それにしては、葬儀の後(引導を渡した後)に四十九日や百箇日、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌とお坊さんを呼んで供養の儀式が続きます。これって、まだ故人が成仏していない、あるいは完全にあの世に往っていないことになるんじゃないでしょうか。葬儀の時の「引導」は力がなかったのかと疑問が沸くのも仕方ないかも知れません。
本来、お坊さんは葬儀をやらない

 前述の「葬式仏教」は、実は日本固有の伝統です。釈迦仏教でいえば、釈迦は入滅のとき、侍者のアーナンダ(弟子)から「世尊の葬儀をどのようにすればいいのでしょうか?」と聞かれたときに「私の葬儀は在家信者にまかせない。あなた方出家者は、怠らず修行に励むように」と言われたそうです。
 ものの本によると、人類の歴史の中で、聖職者が葬儀に関わるのはむしろ特殊なことだそうです。一般的には俗人が葬式を営んでいたそうです。
 日本の仏教においても、現代でも奈良仏教(法相宗や華厳宗など)は、お坊さんは葬儀に関わりません。
 日本の仏教が葬儀を担うようになったのは、ご承知の通り徳川幕府の時代からです。キリスト教排除と庶民管理が、その動機でした。
 しかし、その後、数百年に渡って、お坊さんが葬式に関わり、「葬式仏教」は日本の伝統・文化にまで確立されてきたのも事実です。
葬式仏教から形式仏教へ
 合理主義と科学万能の学校教育を受け、何不自由もなく育ってきた現代のお坊さんに「あの世」や「魂」の存在を信じろといっても無理かも知れません。「あの世」より「この世」の方が、はるかに豊かに過ごせると信じているでしょうから。
 そのお坊さんが、果たして導師として故人に引導を渡せるのでしょうか。葬式仏教の伝統は、今や形式だけが残る仏教に成り果ててはいないでしょうか。
 しかし、科学で宗教を割り切ろうとしても、人間の心の奥底にある愛憎背反的な魂の揺れは、割り切れません。葬式仏教が形骸化していくとともに胡散臭い新興宗教が、先祖の霊の祟りを持ち出してくるのです。
家族の「おまじない」が大切
 無宗教の葬儀は、お坊さんなど聖職者にたよらない葬式です。最近では形式的な「葬式仏教」を嫌って、家族の手による儀式を中心とした葬式が増えました。力のない形式的な引導では、故人もあの世には往けないでしょう。
 形式的な引導より、ご家族の「おまじない」の方が力があるように思います。「あなたに逢えて幸せでした。安心してお眠り下さい」と故人の耳元でささやいて上げることが大切です。あるいは、会葬者の対応に追われる形式的な葬儀ではなく、通夜や別れの時間をゆっくりと取り、故人を囲んで最後のときをご家族が静かに看取ることも大切でしょう。
 そんな心温まる無宗教葬が求められています。
     

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